ピノチヨとなつかしの絵本
大正時代は面白い時代だ。大人が立派な大人であるのが建前であった明治時代からみると、大人に子供の心が欲しくなり、そのほうが人間的だと思った大正の作家たちは子供の世界にあこがれて童話を書いたりした。
イタリアの有名な童話「ピノキオ」が初めて日本で本になって紹介されたのはその頃で、それは小学生の少女、西村アヤによってであった。英訳の「ピノキオ」を夕食後に父が訳しながら話してくれた物語を自分の絵を入れながら雑記帳に書いていった。当時、新聞、雑誌に大きく紹介されて人々に衝撃をあたえたものである。
大正の文化の人たちの求めた心のユートピア、その一つである大正の童話は他の時代と異なった雰囲気を持っていると思うのである。
ルヴァン美術館館長
西村八知