富本憲吉と西村伊作の文化生活 暮らしをデザインする

富本の陶芸は独自の世界に通じる若々しい美がある。だがそれだけではない裏の面も今回は知ってほしい。西村伊作は紀州の新宮に住んでいた。そこに友人である富本は客になって一緒に陶芸を遊んだことがあった。当時、伊作はわが家の建築をはじめ家具や道具や料理まで、世界に通じる美を求めていた。たとえ粗末なものであっても、良いデザインにより豊かになり、生活が文化的となる。文化とは物質的な贅沢ではなく、小さな心の贅沢のある生活なのだ。その思想は、富本に影響をあたえ、日常生活にも本職の陶芸と並行して美しいデザインを求めたのであった。

ルヴァン美術館館長

西村八知