建築家 坂倉準三とユリを巡る人々
良い建築とは、その建物の大小に関係なく、ひとり気高く、ひかり輝いているものである。それをぼくが知ったのは、まだ中学生の頃であったか、坂倉準三の作品を見たときであった。坂倉準三はル・コルビュジェのアトリエで7年程、仕事をした。ル・コルビュジェはじめ仲間達は彼をサカとよんで、愛されていた。その若き時代の彼に、パリ万博博覧会の日本館の仕事が舞い込んできた。彼は見事に日本の伝統と近代性を調和させた仕事をして、青年建築家、坂倉はグランプリを受賞して、パリ中に名を知られた。日本の伝統と近代性というのは、日本の家の外形をただ、つぎはぎに取り入れたのではなく、その精神の美を新しく捕まえる、その美だということを、僕は中学生のときに知ったのであった。今回の企画では彼準三とユリの交友関係のあった、あのパリの良き時代の雰囲気も入れてみます。
ルヴァン美術館館長
西村八知