西村八知 没後10年 西村八知の美の散歩
八知の作品と彼が愛した画家たち
ルヴァン美術館初代館長 西村八知(1922-2012)は、彼の美術への愛を多くの人と分かち合えるよう私財を投じて1997年にルヴァン美術館を設立しました。幼いころから絵を描き、長じてからは父西村伊作が創立した学校文化学院で美術を教え、1988年から2007年まで同校で校長をつとめました。美術作品や作家たちを友人や恋人のように慈しみをもって語る人間味あふれる彼の美術史の授業は生徒たちに人気で、生涯を通じて制作した絵画、テラコッタ、パピエコレなどの作品も、彼のやさしい言葉で語られた美の哲学エッセーとともに作品集にまとめられています(『ユーロペ』『夕暮れの散歩』)。2010年の企画展のあいさつ文には、彼の自然体で美術を愛するやさしさが表れています。
「ぼくがなぜ絵を描いたり、好きな絵や彫刻を持ったりしているのか?それはただ楽しいからで、何の芸術的な意味もない。好きだからというのは、友達や恋人みたいなもので理由なんかない。ぼくの好きな芸術家でミケランジェロとかピカソとかもいるけど、あまり偉い芸術は肩が凝ったりする。だからぼくのコレクションで、ぼくの知らない無名の人の絵もある。ぼくは理由などなく、好きなものに手を出す」
西村八知の没後10年の節目、2023年の企画展では西村八知の作品とコレクションを展示し、八知の「美の散歩」にお誘いします。美しい自然を眺めたり好きな友人と語らうように、肩の力を抜いて美術作品をお楽しみください。また西村伊作の妻、八知の母である西村光恵による子供服、日本が陶芸などの手仕事と手遊び(てすさび)の作品もご紹介します。破格の自由人伊作に嫁ぎ9人の子供を育てた光恵は、震災や戦争で暮らしが激変しても洋裁や西洋料理を学び、創意工夫と創作を楽しみながら生きました。「生活を芸術として」-西村伊作の美学を受け継いだ妻光恵と息子八知のすなおな美との向き合い方をご覧ください。